13.読書

『生涯投資家』を読んでみた

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久しぶりの書評です。村上ファンドで有名な村上世彰氏が書いた『生涯投資家』を読んでみました。

村上ファンドが盛んにニュースで取り上げられていたのは今から10年以上前の話です。当時私は仕事が忙しく、ライブドアとか村上ファンドとか、いろいろ騒がしいなくらいにしか思っていませんでしたし、インサイダー取引で捕まった人というのが村上氏に対する認識でした。しかし日本における「物いう投資家」の先駆けが村上氏ということは知っており、その人が書いた本ということで興味が湧き手に取ってみました。

結論から言うと、村上氏のイメージが大きく変わりました。報道を通じて「いかにも悪い事をしそうな人」という先入観を持っていましたが、本を読んでみると村上氏の主張の大半は正当なものであるという印象を持ちましたし、全体的に違和感がなくスラスラと読めました。

「資金を循環させなければ日本経済が良くならない」というのが村上氏の考えです。これは最近話題になる企業の内部留保の問題に直結しており、私も正しい指摘だと思いました。もちろん、内部留保=会社が現金をため込んでいる、という財務諸表に詳しくない人の初歩的な認識ミスには賛同できませんが、必要以上に預金を積み上げている会社があるのも事実です。明確かつ合理的な理由があって預金を積み上げるならともかく、何となくため込んでいるという企業が多いことを村上氏は指摘しています。本書にはコーポレート・ガバナンスという話が何度も出てきますが、これも資金循環を推し進めるためのツールであるとされています。つまり、コーポレート・ガバナンスを高めることで合理的かつ効率的な企業経営が可能になり、これによって株価が上がって投資家は儲かるし、寝ていた預金の一部は投資に回るので経済も良くなる、というのが村上氏の考えです。

株に投資をしている方であれば、村上氏の考え方を当然と考える方も多いでしょうし、私もその意見に賛成です。しかし残念ながら日本では株式投資をしている人は多数派ではありません。株を持っていない会社経営者や会社員から見れば、既得権益を荒らす面倒な人と思われる可能性は高いです。資金循環が経済の運命線という考え方が、村上氏の主張というよりも信念であり、加えて情熱的すぎたことで「乗っ取り屋」というレッテルを張られてしまったのでしょう。それでもここ10年で少しずつ、社会環境の変化でコーポレート・ガバナンスに対する意識が高まり、株主還元を積極的に行う企業も増えてきたのはよい流れですし、それには過去の村上氏の言動も大きな役割を果たしているものと思います。

また、どういう考え方で投資判断をするのかという話も書かれていました。分類でいうと村上氏はバリュー投資家であり、期待値やIRR(投資の複利利回り的な指標)をよく用いているようです。IT投資が苦手という話は意外でした。

題名に違わず村上氏は投資家マインドを十分に持った投資家です。投資判断のノウハウも多少書かれていますが、大半は日本の会社運営と投資環境をどう変えていくべきかということに重点が置かれ、誤解を恐れずに言えば今後投資家がどのように扱われどんな恩恵を受けうるかを示唆しているようにも思います。多少きれいに書かれている部分があるのかもしれませんが、それでも投資家マインドを高めたいという方にお勧めします。分量的には半日あれば読めるボリュームです。

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