久しぶりの読書ネタです。
仕事の出張で長野県に行った折、伊那食品工業という会社の存在を知りました。長期に渡って業績を拡大させていた非上場会社で少し変わった会社だよ、と地元の人に聞きまして、興味を持ったので購入してみました。著者は同社会長の塚越寛氏。
興味を持ったのが「企業の永続性の観点からは急成長は良くない、むしろ少しずつ成長するべき」という主張です。成長企業がもてはやされる現在においては異色な主張に聞こえますが、主張には道理があり考えさせられます。木は年輪が広いよりも狭い方がしっかり育つ。急成長は歪みが大きすぎる、という主旨です。一応経営者の端くれでもある私にとって新鮮な主張で、確かに過去の会社員時代を振り返ると経験的にわかる気がします。今後の経営方針を考えるうえでヒントになりそうです。
株式投資家として読んでも面白い内容です。経営者サイドから見た「急成長が好ましくない」という話は、投資家サイドから見ると「成長の罠」に該当するのではないでしょうか?「成長の罠」とは、皆が考えるほど急成長というものは続かないから期待しすぎないように注意しよう、という話ですが、通じるところがあるように感じます。
また、引用されてる二宮尊徳の言葉で非常に示唆に富むものがあります。以下、引用です。
遠きをはかる者は富み
近くをはかる者は貧す
それ 遠きをはかる者は百年のために杉苗を植う
まして 春まきて秋実ものにおいてをや
故に富有り
近くをはかる者は 春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず
唯目前の利に迷うて まかずして取り 植えずして刈り取ることのみ眼につく
故に貧窮す
いかがでしょう?私は投資についてもこれが当てはまると思いました。目先の株価の上げ下げも気になるだろうけれど、投資先の長期的な展望を考える方が大事だよ、ということではないでしょうか。目先の利ザヤを抜いてばかりでは消耗するばかり、もっと長期的な観点から取り組まないと成功しないよ、ということだと私は解釈しました。
数時間あれば読めるボリュームなので、興味のある方には一読をお勧めします。
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