かれこれ15年以上株式投資をしていると、株式投資では何が大事かということが経験的に分かってきます。もっと早い段階に気付きたかったということもありますし、気付くために安くない授業料を払ったことも少なくありません。投資スタイルはひとそれぞれで、これが絶対に正しいということはありませんが、備忘録的に書き残してみたいと思います。
①投資目的の明確化
漠然と「儲けたい」という気持ちで株式投資を始める人も多いと思いますが、もっと目的を明確にする方がよいと思います。目的が明確になるほど「ではどうやって実現しようか」という思考に繋がっていくからです。逆に目的が不明確だと迷走してしまいます。
例えば「退職後に十分に余裕のある生活を送るため、60歳までに5,000万円の資産を形成したい」という感じで、目的と目標(期限・金額)をはっきりさせることが大切です。
②戦略と理論的支柱
目的と目標がはっきりすれば、それに向かってどう進んでいくかが次の課題になります。目的の性質で取れるリスクの程度も違っていきますし、目標とする期限や金額と現状との乖離を考えて、どれくらいのペースで資産を増やしていく必要があるかを逆算する必要があります。必要になる資産増額のペースを現実化するために、どんな投資手法が適しているのかを考える必要もあります。比較的緩やかな目標であれば採用できる戦略は多々ありますが、ハイレベルな目標を達成するための戦略(例えばIPOのセカンダリー投資など)は限られます。達成が難しい目標であれば、現実的なラインに修正すべきです。無理な目標を達成しようとすると大きな失敗に繋がるからです。
私の場合は配当逓増戦略を採用しています。年7%のペースで配当と資産を増やしていくことを目指しています(実際には年20%超のペースで配当が増加中)。他にも株価の動きに着目して売買の譲渡益で稼ぐ戦略、テクニカル分析に力を入れて稼ぐ戦略もあります。自分の目的と目標にマッチしていると考えられる戦略を選びましょう。なお、試行錯誤の結果、戦略の変更も十分にあり得ます。
戦略を決めたら、その理論的な支柱を求めるべきです。何事もそうですが我流は無駄が多く、結果として遠回りになりがちです。お手本となる投資家や書籍を見つけてじっくり研究すべきです。理論的支柱が見つけらない戦略は、先例がない分ハイリスクです。投資目的に照らしてリスクを低くしたい人は、オーソドックスな戦略を選択するべきです。
③最低限の資金
投資をするためには最低限の元手が必要です。元手を貯めるという行為は資産形成の初歩であり、古典的な資産形成指南書に必ず書かれているといってもよいくらいです。個別株投資なら最低でも50万円は必要ですが、投資信託の積み立てならもっと少額でも大丈夫でしょう。
なお、投資は余裕資金で行うべきで、近々に必要となる生活資金を投資に回すのは禁忌です。往々にして株価は思った通りには動いてくれません。相場に長く滞留できない性質の生活資金を投入すると時間を敵に回してしまうので、非常に分の悪い勝負になります。
④投資に関する知識
高度な知識は不要ですが、最低限の勉強は必要です。まずはPERやPBR、ROEなどの基本的な指標の理解が必要です。これらを理解することで大儲けができるわけではありませんが、大損を回避できる確率が高くなります。転ばぬ先の杖です。基本的な指標については株式投資の入門書を読んでもいいですし、最近では投資ブログも充実していますから、それを読んでみるのもよいでしょう。加えてダイヤモンド・ザイを1年くらい購読するのも良いと思います。
個別株投資をするのであれば財務諸表の基本的な読み方も押さえておくべきです。書店に行くと手っ取り早く勉強できる新書が並んでいるので、その程度は読んで理解しておくべきです。この知識も転ばぬ先の杖になってくれます。
加えて、投資の名著といわれる本を読むのもおすすめです。優れた投資家が投資のコツを教えてくれるのですから、非常に効率のよい勉強方法です。
投資で大損すると取り返すのが大変です。大損を回避することが、目標達成の近道です。基本的な知識を抑えるには簡単な資格試験の勉強程度で済みますし、費用もさほど掛かりません。この程度の時間とコストの投入で何十万、何百万レベルの損失回避の確率が高まるわけですから、非常にコストパフォーマンスが高く、押さえるべきポイントといえます。
⑤強い精神力
実際に投資を始めてみないと実感できませんが、投資は自分との戦いです。理性的な人でも感情に振り回されがちになるのが株式市場の怖さです。感情に基づいた投資判断は失敗につながるケースが多いので、どれだけ感情を抑制できるかが投資の成否を分けます。そのためには強い精神力が必要で、それを支える理論的な支柱や知識が不可欠です。これは最初から必要な要素というよりは、経験を踏んでいく中で徐々に身に付けていくスキルだと思います。
以上、5項目を記載してみました。自分でも少し意外なのですが、株式投資で重要性の高いと思う項目は、大半が「心構え」的なものであり、テクニックはそれほどではありませんでした。思うにテクニックは相場と格闘する過程でいやでも身についていくのですが、心構えは意図的に意識しないと身につかないように感じます。心構えの有無が、長期的な投資成績に影響してくるように思う今日この頃です。