書評です。今回は『私の財産告白』という本を読んでみました。著者は本多静六氏(1868年~1952年)で、林学が専門の東大教授にして投資家という方です。日比谷公園など、日本各地の公園を設計したことでも有名な方です。
本多氏は苦学してドイツに留学し、帰国に際して恩師から「独立生活ができるだけの財産を築け。そうしないと金のために自由を制せられ、心にもない屈従を強いられる。財産を作ることの根幹は勤倹貯蓄だ。」というアドバイスを受けます。帰国後に給料の4分の1を天引きして元手を作り、鉄道株の投資や山林投資に回して財産を築きました。決して本業をおろそかにせず努力を重ね、本業でも大きな実績を残したすごい人です。しかも大学退官に際して匿名で財産の大半を寄付するという、なかなか常人にはできないことをやってのけています。
気が付いた点は2点ありまして、まずは「意志の強い人だなあ」という点です。しっかり目標を立てて前向きに努力を続けていく意志の強さが本多氏の原動力です。投資でも仕事でも成功するには、こういう要素が必要なのでしょう。自己管理能力が非常に高いのです。
もう一つは「真似できることが多いかも」という点です。偉業を成しえた人であることは確かですが、何となく「自分にもできそう」と感じるわけです。目標を立てて努力する、自己管理を徹底するという本多氏の生き方は、真似できないことはありません。実際には怠け心が邪魔をして思うようにいかないことも多いのですが、絶対に真似できないということもないわけです。成功への道は誰にでも開かれているのだと感じました。
投資初心者が読むべき本でもありますし、ある程度投資歴があって資産を築いた人であれば「築いた資産をどうするのか?」と問題について考えさせられる本です。亡くなる数年前に書かれた書籍なので、長く生きてきた人が語る人生の機微みたいなものが豊富に含まれており、読んでいると酒でも飲みながら大先輩に教えを受けているような気分になってきます。本多氏は他にも多くの本を残したので、折に触れて読んでみたいです。
数時間あれば読めてしまうボリュームで価格も手ごろな本です。時間に余裕のある方はご一読ください。投資のテクニックに関する言及は少なめですが、同じ日本人から投資の心構えが学べる貴重な一冊です。
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